失くし物 |
ID:91980大林秋斗 |
「失くし物」 授業中、わたしの机には教科書ノートの類はない。 乗せられたものが何もない机、黄土色のつるりとした合板が見えるだけ。 あるものといえば机の横にかけられた、中身のはいっていない空っぽの黒い鞄。 この鞄もいつかは無くなってしまうのだろうけれど。 もちろん、他のクラスメイトたちの机の上には、教科書やノートがある。 何もない机は、わたしだけだ。 先生はそんなわたしには気にもとめない。 どんどん授業を進めている。 状況だけ見るとわたしが先生を含めたクラスみんなから「いじめ」にあっているように思われるだろう。 でも違う。 わたしが自ら望んだことなのだ。 どうか、わたしには関わらないで……。 |
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肝試しいちゃいちゃデート |
ID:240189雷田矛平 |
「着いたか」 それはよくある話。 町外れの廃病院では幽霊が出るという噂があった。 俺――名前は優人だ――はリュックを背負い、バイクに乗ってその病院にやってきた。土曜日の夕方。段々と辺りが薄暗くなってきて、幽霊が出てくるには絶好のシチュエーション。 その廃病院は、廃れたと呼ばれているがそれは正確ではない。内装はきれいに残っており、廃病院というよりも人が全くいなくなった病院といった方が正しかった。 俺がここに来た理由。それはつまらない目的があるだけであった。 というのも、俺はその噂を信じていないからだ。 必然と理由は一つになる。 「ただの暇つぶし、あるいは肝試しとでも言うのかもな」 俺は吸っていたタバコを投げ捨て、バイクを入り口に駐車し、病院へと一歩足を進めるのだった。 |
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トクオカさん【夏のホラー2012参加作品】 |
ID:47737ずび |
俗に言う『訳あり物件』には大きく分けて二種類存在する。雨漏りや部屋の窓向きや騒音被害など、生活に実際に支障が出る部屋は物理的瑕疵がある、と言い、以前の入居者の自殺や、宗教団体が以前出入りしていた、などの生活に支障はないがいわゆる『いわくつき』の部屋は心理的瑕疵がある、と言うらしい。 私が入居を希望した『太陽荘』の103号室は後者であった。 (本文より抜粋) 『幽霊が出る』と専らの噂である『太陽荘』の103号室に住まう小山は、そこで数々の怪奇現象に見舞われながらも、これまでの入居者達が作り上げてきた『霊を怒らせないためのルール』を守りながら生活を始める。やがて小山と103号室の幽霊の間には奇妙な絆が芽生え始め……。 |
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セールスレディ 宮沢朋子 |
ID:191716玲於奈 |
2011年4月「今月の営業成績トップは、宮沢朋子さんだ。彼女は、トップセールス目指し日夜頑張っている。君たちも頑張ってくれ。」 おばちゃん社員の視線は痛い。その視線を避け、話す主に目を向ける。小岩川支店 支店長 悠木 紀夫。財閥系安同生命の同期トップを走るエリート。 2年で本店に戻され、階段を昇り始めると着任早々話題の人物。そして、そんな支店長に今回踊らされたのが私。宮沢朋子。 「底上げは、支店全体を引き上げる」口癖のように、支店長が全体に周知する言葉。それが口だけでないのは 着任早々にわかった。 |
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ただ、君を、守る(夏のホラー2012) |
ID:205393ペタ |
「ただ、君を、守る」 僕の彼女は大学生。ほとんどひとめぼれだったが、積極的なアプローチが実を結び、今では相思相愛で半同棲状態。今日もベッドの隣で彼女は僕に微笑んでくれる。 でも、彼女は怪しげな連中に狙われている。僕は彼女が好きだから、命がけで守ると誓ったんだ。例え相手が誰であっても。例え、この命に代えても。 果たして、彼女を狙う連中の正体は? 僕は最後まで彼女を守れるか? そんな感じの純愛サスペンスホラー小説です。 |
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夜祭りのヨル |
ID:233745鶸 |
今日は『おやま』の夜祭りだ。 紅提灯が道作り、祭囃子が鳴り響く。並ぶ夜店に目を奪われ、踊る影に足取られ、居並ぶ異形に手を取られ、やまの奥へと迷いこむ。 『おやま』の奥は狭間の地。 迷いこんだら、戻れない。 ひとりきりで『おやま』の夜祭りに出かけた私は、近道をしようとして奇妙な場所に迷いこむ。 ここは『おやま』の夜祭り。 けれど、私の知っている『おやま』じゃない。 出口を探して、私は異形の夜祭りの中を歩き回る。 狐。赤い花嫁衣装。カエルのおばけ。お面の少女。 はやく。はやく。 はやく、おうちに帰らないと―――― |
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いーれーて |
ID:209946内田健 |
夏祭り。 一見華やかな夏の催し。 その参加者は数多いが、全員が知っているわけではないもう一つの顔がある。 鎮魂祭。 地域それぞれで諸説あることは否めない。 しかし、吾妻 奏が住むその街の夏祭りには、確かに別の顔を持っていた。 中学二年生の夏祭り。 夕焼けに染まる街の中、仲の良い友人達と夕方集まって神社に出かけた。 遊び盛りの中学生にとって、諸手を振って夜遊びが出来る数少ない機会。 皆舞い上がっていた。もちろん、彼女も。 そして、奏は、一生忘れる事の出来ないであろう、不思議な体験をする事になる。 さあ、あの暑かった夜を、振り返ってみることにしよう――― |
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おいでおいで |
ID:231817相野仁 |
主人公、村田孝一が住む地域には「招き霊」という都市伝説があった。 夕暮れ時、人や車が通らないトンネルの中に一人で入ると「おいでおいで」という声が聞こえてきて、三回以上聞いてしまった者は二度とトンネルの外に出られなくなるというのだ。 主人公は全く信じていていなかったが、行方不明になる者が何人も出た。 同級生からも行方不明者が出て、孝一は親友の吉田哲彦と二人で調査する事を決めた。 果たして主人公は行方不明者を探し出せるのか。 |
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そこにいたのは |
ID:252288ドM伯爵 |
大学に進学した渡明菜は大学の些細な出来事で家に引き籠もってしまっていた。 自分の容姿に自信をなくしてしまった明菜は家の鏡を割ってしまい、自分の顔も忘れてしまっていた。 そんなある日、明菜は巨大な植物が生い茂っている場所で目を覚ます。 そして、そこでおじいさんに声をかけられる。 「そこの綺麗なお嬢さん」 明菜は生まれてから一度もそんな風に呼ばれたことがなかったので、自分が呼ばれているとは思わなかった。 しかし、その背中には綺麗な羽が生えていた。 |
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幽霊ッテ不思議ダネ |
ID:194210紫苑 鎌鼬 |
みんなは幽霊はいるんだって信じてる。だから、みんな夜はどこも出歩かない。その理由を聞くといつもみんなはこう答える「幽霊が出て、連れて行かれちゃうから」と。 でも、私は信じない。だって、夜に海に行ってもお墓に行っても幽霊なんて見たためしがないから。だってそうでしょう?見えないんだもん、だから、いるはずない。いたら見えるはず。お墓は見える。不気味だけど見える。海も見える。海ってきれいだよね。だから私は毎晩海に行くのが習慣だった。このごろは、海を見るためじゃなくて、幽霊なんていないって証明するためだけどね。 |
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