夕闇の落ちる頃 |
ID:218014今宵 侘 |
俺が住む町の山中にある、自殺の名所として知られる切り立った崖―――美しい夕焼けが落ちる時刻、俺はそこで恋人の夕美が死んでいるのを発見する。 突然の出来事に悲しむのも束の間、決まって夕方の時刻に夕美と親しかった人物が何者かの手によって次々と惨たらしく殺されていく事件が起こる……俺はそれを夕美の怨念によるものだと判断し、その災厄を止める為、そして夕美が死んだ理由を知る為に動き出す。 真っ赤に染まる空と地面―――郷愁的な風景の中で繰り広げられるホラーサスペンスが今、幕を開ける。 |
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少年とカロン |
ID:168665浮艇 景(元・右京 直) |
「ねえねえ、俺、海ってあんまり見たことないんだ! どうせ長くないだろうし今のうちに見ておきたいんだけど、この近くできれいな海が見れるとこってない?」 ちょっと前に公園で出会った、病弱な友人。 あまり長くはないと知っている彼に、僕はお気に入りの場所に案内した。 そこは、限りなく澄んだ青い空とどこまでも深い青い海が見える崖の上で、そこで僕らは青がオレンジに、そしてオレンジが青紫色になるまでずっとずっとその景色を見つめていた。 そしてその帰り、僕らはとてもとても大切な約束をした。 ――――遠い夏の日の記憶。僕らがあの日何を約束したのかはもう覚えていない。そしてもはや彼の名前がなんだったのかでさえももう記憶という海の遥か底に沈んでしまっていた。 あの夏の日の記憶以外に僕が覚えていることはただ一つ。 それは僕はあの後すぐに崖から転落して、ほとんどの記憶を失ってしまった、ということだけだった。 あれから何年も経っているが、僕の記憶と、わずかに残った記憶の中の友人を探してみようか。 ――――同じく幽霊である少女と共に。 |
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怖くない映画 |
ID:230872服部 泉美 |
主人公のある少女は、お化けや幽霊の存在などは信じていない。しかし、ホラー映画やそういった類いのテレビ番組や、占いや風水とかいうものが大好きだ。 ある日、友達と映画へ行った日のこと。 朝、その日の運勢を自分で占った。結果は凶。「これまでに無い恐ろしい体験をする」と出た。恐ろしい体験について占っても、それ以上何も分かることはなかった。 その日は話題のホラー映画ではなく、怖がりな友達に合わせて少しだけ怖いと言われていた、別の映画を見ることになった。 しかし、それが既に間違った選択だったのだ。 彼女は、一体どんな体験をし、どんな恐怖に晒されるのか? |
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夕闇に消える、 |
ID:214273舞雪 |
「なんかさ、俺見たっぽいんだよね。幽霊」 「頭沸いたか」 ある日突然、友人が幽霊を見たとか言い始めた。 「しかも憑かれたみたいなんだよね。」 憑かれたとか何とかで相談されたけど、俺になにか出来るわけでもない。どうせ冗談だろ、と思ってしばらく放置していたんだが。 「お前どうした…!?」 「お前ってなぁに、失礼ねぇ?」 その友人に時折奇行が見られるようになった。 それは女装してオカマ口調になったりだとか、突然殴ってきたりだとか、奇声を発して暴れたりだとか。 これは放っておけなくなったぞ、と俺はその友人に憑いている幽霊と思われるものを成仏させることにしたんだけれど…。 |
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帰ってくる家 |
ID:3077並盛りライス |
キキはバルコニーに出て手をかざす。 まだ降っていない雨が体をすり抜けて地面に打ち付けられる。 そこからは、新聞屋さんが乗ってきたベージュ色のフレームの自転車が見える。 雨水を流す為の排水管は、まるで私達の血管のようだとキキは思う。 鉄の手摺りは錆びついた緑青。 叫びだしたい慟哭を抑えつつ、あの人の来訪を待ち続ける。 クリスマス以来だとキキは思う。 思い始めたら止まらない。 もうずっと待っているのに連絡の一つも寄越さないあの人。 少しだけ瞼が重いけれどキキは眠る事はできない。 |
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その部屋は、 |
ID:222447不愉快なタンス |
「あ、そういえば、あのアパートってこの前首吊り自殺があった場所なんだよね? 気味悪いなぁ。」 きっかけは、他愛もない一言だった。 ついつい好奇心に駆られた紀田 充輝(きだ みつき)の言動に心を揺さぶられたのか、彼の親友である滝 龍騎(たき りゅうき)も彼についていってしまい、オンボロアパートへと足を伸ばす。 アパートの部屋は全て解放されており、中には同じ物好きな奴らの姿もチラホラ。 全ての部屋を回り終え、何もなかったなー、なんて会話をしている充輝達だったが、やがて自分達の周囲から人がいなくなっていることに気づく。 「おい、早く帰らねぇとやばくねぇか?」 そんな言葉も束の間。 アパートの入口の戸は閉められ、窓も開かない。 アパートの中に閉じ込められた彼らの運命は!? |
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無人島 |
ID:192193あんたのわたし |
今朝、一通の手紙が届きました。 私は、その手紙により、例の事件の真相を知ることが出来ました。 私たちの家族を苦しめ続けている悪夢、つまり、あの事件の真相を知ることになったのです。 ところが、真相を知ることは、新たなる悪夢の始まりであったのです。 その手紙は、巨大旅客船『白樺』の消印になっていました。 消印の日付は、そう、死んだはずの私の夫を乗せていた巨大客船『白樺』が遭難した その当日のものでありました。 私は、夫が、絶対に開けてはならないと言い残していた秘密の部屋に、 手紙に同封されていた鍵を使い、入ってみることに決めたのです。 誰にも秘密で、私一人で…… |
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空き家 |
ID:129209卯月朔 |
暗く狭い道を進むと、左手に石段が現れる。さらに、その石段を登り終えると、眼前に古い家が現れる。懐かしい、そして忌まわしい、かつての生家。 この家を見ると、幼かった日々の記憶と、かつて心の奥底にしまいこんだ戦慄の記憶が同時に蘇る。 「まだ、いるのか」 大導寺信夫はそう呟くと玄関に近づき、恐る恐る鍵を差し込む。 重く、軋んだ音ともに、玄関の鍵が開く。 それは、あの日の恐怖を解き放つ音でもあった…。 何故、大導寺は戻って来たのか? 幼い日々を過ごした家にまつわる恐怖の正体とは? 十数年の時を経て、あの恐怖が蘇る。 |
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化け物退治 |
ID:246986七壱ハチ |
「ねえ君、幽霊が見えるの」 「そんなわけないじゃない」 「絶対見えてるでしょ。だって、俺みてたし」 「あなたもあれが見えてたの」 「うん、あれを退治するんだ」 彼はどこか嬉しそうに笑って言った。 夏休み、両親に連れられておばあちゃんの家にいた私は、暇をもてあましていた。そんなときに出会ったのが彼で、化け物だった。化け物は古くからこの土地にいるもので、お盆になると裏山に出てそこに入る人間を食らうらしい。 彼はそれを退治するのだというのだ。 それはなんだか面白そう。 「私、手伝う」 「ええ!?」 戸惑う彼を尻目に化け物退治を手伝うことにした。 |
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異形の愛 |
ID:250622物柿 |
自分以外と喋っている人を見つけると執拗な嫌がらせを始める。五分に一度必ず「だいすき」とメールを送る。何をするわけでもなく、ただ家の前にいる。 松坂雪子は異常だった。 そんな女との交際が長続きする訳はなく、岸辺章太郎はすぐに別れを切り出した。 しかし、やはり簡単には別れてくれない。 およそ一ヶ月の逃亡を終え、元の家に戻ってきた章太郎は、松坂雪子が自殺したとの知らせを聞く。 自分のせいで自殺したという罪悪感よりも、解放されたという喜びは強く、平穏な生活が戻ると思っていた章太郎だったが… |
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